ずいぶん前の話だが、私はいちど日経新聞の意見広告の掲載に応じて、北方四島の一括返還を主張したことがある。その後さまざまな情勢の変化があったので、今はそれを全面的に改めたい。

第一の変化は、民主党政権による尖閣諸島占有によって生じた日中間のいざこざと、そのための防衛費・無用な防衛エネルギーの増大である。領土を持つということは、国家にとって大変な負担になる。「持たざる経営」がよい。
第二の変化は、同盟国に過大な負担を強いて自国のみの繁栄を図ろうとする唯我独尊なトランプ政権の誕生である。日米安保下での地位協定の改定に応じないのみか、欠陥機オスプレーを大量に横田基地に配置させて日本国民を威圧しながら、武器の売り込みに余念のない米国のわが国への露骨な反骨である。
第三の変化は、トランプ政権にとって唯一の外交金星である北朝鮮の核放棄意思の確認である。今年の同国の建国記念パレードには軍事色が影を潜めた。
第四の変化は、中ソの急接近と千島周辺を含む北方での合同軍事演習だ。これは、日本が北方四島の返還を得たのち米軍が基地をおけば、北方四島を攻撃するぞとの前もっての意思表示であろう。その一方で、プーチンが安倍首相に、領土問題を棚上げにして年内にも平和条約を結びたいと云ったこと。しかもこのとき、ゴルフではなく柔道観戦を首相とともにしたこと。講道館柔道は日本の心であり、ゴルフの場合は、少人数が長時間屋外で拘束されるので、ゴルフから出た商談に乗って失敗する経営者も多い。ゴルフはマイナスを減らす訓練にはなる。

こんな状況の中では、プーチンの提案に乗って平和条約を結び、朝鮮半島の非核化を監視し促進するJRCA(日露中アセアン)非核平和包囲網を作って、朝鮮半島の非核化を監視し促進するのがよい。第二次大戦中の日本軍を包囲するABCD包囲網や、鉄のカーテンを破るための米国・西欧・日本によるソ連東欧包囲網に比し、はるかに平和で成功率も高い。成功すれば、日本と総合商社の活動分野が拡大する。
では、北方四島をどうするか。返還されてもすぐ米軍基地になり四島が第二の沖縄になるなら、返還されないことが日露両国の国益にかなう。「持たざる経営」に徹し、四島の所有権を持たずに利用権だけを得て日露が共同開発するなら、両国の利益にかなう。スヴァ―ルバル条約に倣い両国民が自由に四島を利用できるなら、もっといい。時間をかけても協議する価値がある。

(18.9.17)